
その間の所謂シングルA面曲を網羅している上、映画「あの空をおぼえてる」の主題歌までシングルに先行して収録している。タイアップの付いたカプリング曲を何曲か外してはいるが、それでも13曲中9曲がシングル曲、11曲がタイアップ付きだ。ベスト盤的色彩が濃くなるのも当たり前だ。9曲中7曲がシングルになったMichael Jacksonの“Thriller”みたいなもんだ。
“FAKIN' POP”というアルバム・タイトルもイカシている。曲名に“Star”という単語を含む曲が2曲あり、共通項を消した残りの部分をアレンジしてアルバム・タイトルにしたような感じだ。Poppin' Fakeだったら「弾むマヤカシ」になってしまうが、「イカサマのポップ」なら皮肉交じりの謙遜かなと、善意に解釈しておこうと思える(笑)。R&BやFunkといったダークなイメージと、ポップ・チューンの軽やかさ・明るさが共存するアルバムの内容を端的に象徴していると思う。ジャケットもかつてないほど明るめでカラフルだ。
何か吹っ切れた感じがすると思ったら、答えはアルバムのラストにあった。表向きは「JRA2008イメージソング」ということになっている「写真」は、歌詞にきちんと耳を傾ければすぐ、亡くなった父親への想いを綴った曲だと分るはずだ。私も父を亡くしているから、歌詞に込められた想いは痛いほど分る。
成人して自活している、自立していると思っていたつもりだったが、父親が亡くなった時はじめて、大人になってからもずっと父親の背中を見て生きてきたのだなと気付いた。良くも悪くも父親は精神的な支柱だったのだと。それは同時に人生の道標を失ったことを意味する。これからが本当の意味での自立だと悟った時、自然と生活態度は変わってくるものだ。平井堅の場合はそれがキャリア・アップに繋がっていることを、本作で証明しているように思う。
だが、そんな深読みをしなくても、十分楽しめるアルバムだ。人間の本質に根ざした不条理や不道徳を歌ったスガシカオっぽいアブノーマルさの見え隠れする曲から、一瞬槇原敬之の書き下ろしじゃないかと思ったほどストレートに誠実な思いを綴った曲まで、多彩な楽曲が並んでいる。
もともと自作曲ばかりだから、こういう見方はおかしいかもしれないが、色んなアーティストのイイトコ取りをしていながら、小気味良く転がるファルセットと説得力のある声量で包み込んで、平井堅の世界にしてしまっている。結果的に、深く聞き込みたい派にも、お出かけの際のBGMなどチョット音楽が欲しい派にも、十分応えられる間口の広さを備えている。
最近の男性歌唱曲は、よく言えば女性に対して誠実な、悪く言えば優しすぎて軟弱な歌が多い。メロディもサビで思いっきり盛り上がる熱唱型が多く、総体的に似通っている。そんな状況下で「君はス・テ・キ」や「fake star」のような異彩を放つ曲までシングルで出してくる。タイアップが付くからこそレコード会社もリリースをOKするのだと思うが、将来のアルバム化を見据えた戦略の内だとしたら、まんまと術中にハマったことになる。見事だ。
★Best Track=「写真」
もう本文から察しが付いていたことと思いますが、やはりこの曲ですよ。聞いているだけでも胸に込み上げてくるものがあって、ちょっとカラオケでは歌えそうにありません。
タグ:FAKIN' POP 平井堅


