追憶の彼方に~メモリー・オールモスト・フル(DVD付)
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ポール・マッカートニー
ユニバーサル ミュージック クラシック (2008-01-16)
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Paul McCartneyを聞くような音楽ファンとなると、(私も含めて)どうしても年齢層は高めだろう。当然LPの時代から音楽に親しんできたことになる。だからこそ、LP版も出したのだろう。だが、そういう世代だって、とっくにCDの洗礼を受けているはずだ。一度ならず二度までもリニューアルして豪華になれば、音楽自体を云々する以前の段階で、反感を買ってしまうのは当たり前だろう。
幸いMariah Careyという前例のおかげ(今回も購入を見合わせています。爆)で、通常盤のリリースから半年余り、この完全版が出るまで待つことができた。だが、Mariah Careyの時のように、待った甲斐があったという喜びはなかった。タイトにまとまっていた前作“Chaos And Creation In The Backyard”に比べると、どうしても散漫な印象は拭えない。
封入の日本語解説によれば、制作に取り掛かったのは、本作の方が先だったそうだ。確か前作の制作に際して、プロデューサーのNigel Godridgeはツアー・バンドと録り溜めていたものを全部ボツにしたという話だった。本作収録曲はそうした楽曲なのだろうか?だが、本作も前作同様McCartneyがほぼ全ての楽器をこなしている。一体バンド・サウンドはどこへ行ってしまったのか、疑問が残る。
最近は英米モノに関する情報収集をほとんどしていないため、本作と前作の制作事情がどうにも噛み合わなくて釈然としない。結構詳しく解説しているようで、肝心なことがはっきりしない。わざわざ国内盤を買った意味がない。あるいは、私の知っている前作の制作エピソードが、どこか間違っているのだろうか?
そもそも、前作と本作を比較すること自体がおかしいのかもしれない。だが、どちらもMcCartneyがほぼ全ての楽器を演奏しているのに、プロデューサーが違うとこうも結果が変わるものなのかという点で、非常に興味深く、ついつい比較したくなってしまう。
実際に聞き比べてみて思ったことは、以下の通り。前作におけるNigel Godridgeのプロデュースは、アルバム全体のまとまりを重視していたようだ。一方、本作におけるDavid Kahneのプロデュースは、個々の楽曲の持ち味を重視した感じだ。つまり、音作りの多彩さが本作の印象を散漫にしたという訳だ。
全体的な印象はそういうことだが、聞き比べているうちに、本作の方がMcCartneyらしく思えてきた。アルバムのコンセプトとかテーマとか意識せずに、のびのびと音楽に取り組んでいる感じがしてきたのだ。
元々Paul McCartneyはアルバム指向より楽曲指向が強いアーティストだ。Wingsを率いてチャートを席巻していた1970年代、ヒット曲を連発してアルバムも好セールスを記録していたが、評論家筋のアルバム評はあまり芳しくなかった。当時はまだ子供だったから、次々にチャートを賑わすシングル曲に心躍らせていて、アルバムの評価の低さがピンと来なかったが、今ならその理由は分る。
よくよく思い返せば、大ヒットした“Wings At The Speed Of Sound”
とかく洋楽にのめりこむようになると、アルバム指向が強くなるらしい。日本と欧米のアルバムとシングルのリリースのパターンを比べれば、そういう風に仕向けられてしまうのも納得できるはずだ。欧米では、シングルはアルバム・セールスの延命ツールとして、アルバムからカットされる。日本では既発シングルを収録することで、アルバムの初動セールスを上げている。楽曲指向の強いMcCartneyがアルバム指向の欧米の音楽シーンに長年君臨してきたのは、やはり凄いと思う。
★Best Track=“See Your Sunshine”
典型的なMcCartneyメロディのポップス・ナンバーだ。これじゃなくて“Ever Present Past”がセカンド・シングルになったのは、“Ever Present Past”に某有名曲のサビのフレーズが仕込まれているせいなのかもしれない。
注:5/17改訂(少しはマシな内容になったと思っております)



